【読書感想】贖罪の奏鳴曲(ソナタ)|中山七里|どんでん返ししたのは事件だけじゃなかった!

こんにちはginkoです。
今回は中山七里さんの「贖罪の奏鳴曲(ソナタ)」の読書感想を綴ります。悪名高い弁護士が活躍する法廷劇なのですが、読んでみたら目の離せない展開を最後まで楽しめるミステリーで、今回もまんまと騙されました。
個人的な見どころもあわせて紹介するので、本作が気になっている人は、是非参考にしてください。
※ネタバレは極力回避していますが、気になる人はご注意ください。
あらすじ
「死体に触れるのは、これが二度目だった。」土砂降りの夜、弁護士の御子柴礼司によって川に投げ捨てられた遺体。後日発見されたその遺体は、フリーライターの加賀谷竜次。
御子柴はどんな罪状で起訴されようが、必ず勝ちを取る無敵の弁護士として有名ですが、多額の弁護料を要求する悪名高い弁護士としても有名です。その一方、一文も徳にならないような国選案件も多く引き受けており、現在も国選案件である「東條製材所の保険金殺害事件」を担当しています。
「東條製材所の保険金殺害事件」は加賀谷が殺される直前に追っていた事件。さらに、警察は加賀谷が事件と同時に「少年犯罪」や「猟奇犯罪の加害者」についても詳しく調べていたことを突き止めます。
事件を担当する刑事は早速、東條製材所に足を運びますが、そこで会ったのは加賀谷が追っていた猟奇犯罪加害者の顔と瓜二つの御子柴。両者が同一人物とわかった途端、御子柴は加賀谷殺しの容疑者とされてしまいますが、彼には鉄壁のアリバイがありました。
御子柴礼司が関わる「東條製材所の保険金殺害事件」と「加賀谷竜次殺人事件」、無敵な弁護士は2つの事件をどう切り抜けていくのか。また、過去に罪を犯した御子柴が何故弁護士になったのか、彼にとっての贖罪とは?
贖罪の奏鳴曲の見どころ
本作を読んで、個人的に感じた見どころを3つまとめました。
見どころ1:主人公の弁護士がまさかの元凶悪犯
主人公の御子柴礼司は、少年時代に猟奇犯罪を犯し、後に弁護士となった人物です。
御子柴は、依頼人を勝たせるためなら手段を選ばず、高額な弁護料を請求することから悪名高い弁護士としても知られており、彼を良く思わない人物は数知れず。しかし、その裏には彼自身の過去や信念が隠されており、時折見せる人間的な側面とのギャップが唯一無二の魅力を放っています。
現実では考えられないようなダークな印象を醸し出す主人公自身が、本作の見どころの一つです。
見どころ2:緻密でスリリングな法廷ミステリー
本作は無敵な弁護士が主人公となっているため、本作最大の見どころはやはり法廷での活躍ぶりですが、法廷以外でもスリリングな場面が多く描写されています。
また、御子柴サイドや警察サイド、さらには御子柴の少年時代など視点や時代でシーンが適度に変わるため、最後まで展開に飽きがこないのもポイント。要所要所に仕掛けられた伏線は伏線と気づかない程緻密で、後半のどんでん返しまで存分に楽しめます。
見どころ3:「贖罪の奏鳴曲」が示すもの
御子柴礼司は、元々猟奇犯罪を犯した化け物でした。それが、医療少年院で一人の少女のピアノ演奏を聞いたことをきっかけに自分と向き合うようになります。少年院で出会った隣人や担当教官との交流もあり、徐々に化け物から人間に戻っていった御子柴が、どのように贖罪を行うのか。
ソナタとは、簡単にいうとピアノでソロ(独奏)を奏でるための形式をとった音楽。3あるいは4つの楽章で構成されることが多いのですが、本作品もそれを狙ったのか第4章で構成されています。作品の最後には、事件の解決だけでなく、御子柴がソロ(一人)で行っている贖罪も明らかとなり見どころです。
贖罪の奏鳴曲を読んだ感想
ここからは「贖罪の奏鳴曲」を読了して感じたことをそのまま綴りました。
御子柴礼司の魅力にハマった
元凶悪犯の弁護士というのは、実際には難しそうな設定で、ものすごいドス黒い性格の持ち主ではないかと思っていました。少年院時代で変わるきっかけがあったとしても、人間の本質は変わらないという思い込みも。
弁護士になった御子柴は孤高で常に冷静沈着、自分にとって必要なことだけ行います。また、クライアントに対しても、裁判においても、感情的になることはありません。少年時代の彼は「殺人の理由=本能」というくらい歪んだ感覚をもっていましたが、当時から感情的になることはなく、色んなことを冷静に考えめぐらせている人物でした。
恐らく彼の本質はそこにあり、歪んだ感覚が取り除かれた(と信じています)後、彼は彼なりの贖罪を静かに続けているだけ。高額な弁護料を請求することも、逆に得にならないような国選案件を引き受けるのも、彼の贖罪につながっていました。
彼にとっては当たり前の行為だからか、それについて誰にも説明していません。そもそも彼が誰かに理解してもらおうとも思っていなさそうで、信念が揺らがない孤高のキャラクターにいつの間にかハマってしまいました。
最後の最後までミステリーを楽しめた
ミステリーが好きなのに、毎回騙される私。この作品でも「えっ!」という感覚が多々あり、最後の最後では一番大きな「えっ!」がありました。
御子柴が遺体を運ぶ冒頭には、驚きつつも「いやいや何か事情があるんでしょう?」とは思っていたのですが、それ以外の部分は色々想像しながら読んでも見事に違っていて・・・(笑)。私の想像力って・・・と思いつつ、今回も作家様の手のひらをコロンコロンと転がさせて頂きました。
ミステリーを読んでいると、どうしても色んな推理を独自に展開してしまうので、そこをかいくぐって騙してくれる作品って本当に面白いです!
わかりやすい法廷劇だった
弁護士や検事がやりあうような法廷劇は、実のところ個人的にあまり好みではありません。難しい言葉が飛び交うため小難しいという印象と「法律というものを上手く利用して言い負かした方が勝ち」みたいなモヤモヤが残ること多いのが苦手な理由です。
弁護士が主人公という紹介文を読んだ時には、一瞬読むかどうか迷いました。しかし、物は試しで読んでみると「言い負かした方が勝ち」みたいなところは存分にありましたが(笑)、言っていることはわりとわかりやすかったです。
作中で、御子柴が案件をどう切り抜けるかで、それまでの調書を図解も含めて提示(描写)されていたのも良かったと思います。その調書を読むことで状況がわかりやすく、御子柴と同じ目線にたったような感覚になれたのも面白かったです。
御子柴礼司シリーズを読破したい
御子柴礼司が主人公となった作品は、本作を含めて4作品あります(2025年12月時点。ちなみに残る3作品は「第2作目:追憶の夜想曲(ノクターン)」「第3作目:恩讐の鎮魂曲(レクイエム)」「第4作目:悪徳の輪舞曲(ロンド)」)。
今回手に取った「贖罪の奏鳴曲」が第一作目。一作目の良し悪しで他のシリーズを読むかどうかわかれますが、本作は他の作品も読破しようと思ったほど面白かったです。(ただ、私の読みたい本が余りにも多くて、また積み本が増えてしまう・・・。)
中山七里さんの作品なら「テミスの剣」についても読書感想を綴っているので良かったら参考にしてください。
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