【読書感想】営繕かるかや怪異譚|小野不由美|新しい形の解決方法にそうきたか

こんにちは、ginkoです。

今回は小野不由美さんの「営繕かるかや怪異譚」の読書感想を綴ります。

本作は、ネットサーフィンで偶然見つけたのですが「怪異譚」という言葉に思わず惹かれて入手した小説。読んでみたら「そうきたか」という新しいパターンの結末を楽しめました。

ネタバレは極力避けています。本作に興味のある人は是非参考にしてください。

【どんな内容?】

本作品はオムニバス形式で、様々な主人公が「ある怪異」に悩まされるという話が以下の6話分収載されています。

  • 奥庭より:何度閉めても、気が付けば襖が透いている(隙間ができている)・・・
  • 屋根裏に:天井裏で誰かが歩き回る音がする・・・
  • 雨の鈴:雨の日になると現れる喪服を来た女が少しずつ・・・
  • 異形のひと:自分の家なのに知らない老人が居座っている・・・
  • 湖満ちの井戸:井戸まわりで這いずり回る「水を滴る何か」・・・
  • 檻の外:古びたガレージの中で子供が現れる・・・

それぞれ独立した話ですが、その解決に現れるのが「営繕かるかや」の「尾端(おばな)」と名乗る若い青年です。彼は一体どのような手法で、怪異を解決へ導くのか。

営繕(えいぜん)とは?

営繕とは、建物に関する工事を指す言葉だそうです。新築や増築だけでなく、修繕や模様替えのように幅広い業務を行うそうで、私もこの作品で初めて知りました。

「営繕かるかや」の尾端

様々な形で登場するのが営繕かるかやで働く「尾端」という若い男性です(現時点では彼が社長なのか、従業員なのかはわかりません)。全体的に誰かの紹介で現れるのですが「そういうの」を専門にやっていると言われています。

しかし、当の本人は霊感はないとしており、それなのに「何故かそういう依頼をされる」という認識。そのため、霊的なことを尋ねられても「それはわかりません」とハッキリと伝えています。

本作のみどころ

個人的に感じた本作のみどころをピックアップします。

ホラーが苦手でも読みやすい

本作では様々な怪異現象が起こりますが、どの作品でも主人公が亡くなったりケガを追うような危害は加えられておりません。精神的なダメージという意味では危害が及んでいるといえますが、最悪な事態は免れています。

そのため、グロイ描写もなく、不穏な空気はあるものの「もうこの先読めない!」ほどのホラー描写はない(個人的には)ため「怪異には興味あるけど、ホラーすぎるのはちょっと・・・」という人でも読みやすいでしょう。

「営繕かるかや」尾端のキャラクターが良い

小説の表題になっていることから、てっきり彼が主人公かと思いましたが、そうではありません。もちろん彼なしにこの物語は成立しませんが、作品全般的にも彼の登場は遅い上、登場シーンも少な目です。

ですが、話の大半を怪異に当てられ、各主人公が割いた悩んだ時間はなんだったのかというほど、彼はシンプルな方法で怪異をあっさり解決。若さと軽装、そして「霊感はない」と断言するため、どの主人公からも「本当に解決できるの?」みたいな空気が漂いますが(笑)、サバサバしながらも冷たくはなく、適度な距離感で相手の悩みに寄り添うキャラクターに好感がもてます。

新しい形の怪異との向き合い方

本作は、主人公たちが祖父母などの親族から引き継いだなど、古い家が舞台となっています。家は自分が生活をする場であるため、怪異現象が起きる家での生活は苦痛しかありません。

ここで登場するのが「営繕かるかや」。営繕は先述した通り、家を新・増築したり修繕したりすることです。怪異の起きる家を営繕によってどうやって解決するのか、何をもって解決とするのか、怪異との向き合い方が新しい形で描かれています。

読書感想

ここからは、読了して感じたことを綴ります。

「雨の鈴」は他と異質で怖い!!!

全6話の中で「雨の鈴」が一番怖かったです。主人公は何も悪くないんだけど「引っ越して!!!」って思いながら読みました(笑)。

怪異の根本が一番謎で、その影響がその家だけではないため、自治体?あげて「除霊」するなりしないとマズイんじゃないの?と思うほど、この話には他話と異質な怖さがあると思います。同時に、引っ越しを勧められた主人公が、生活のためにと頑なに引っ越しを拒否するだけでなく、一時の避難さえしようとしないことにもイライラしてしまいました。

怪異の裏にある哀しい事情に心を打たれた

最近、朝ドラ「ばけばけ」を楽しく見ているのですが、とある登場人物が「怪談ってのは哀しいものよのぉ・・・」みたいなセリフを言っていたのです。全ての話ではないですが、怪異を起こしている「誰か」の事情が判明したのもあり、その背景が解った時にドラマのセリフ通りだなと感じました。

怪異を起こしている「誰か」は、何も悪いものだけではなく、ただただ哀しかったり苦しかったりで成仏できてないケースもあるのだと。ただ、だからといって、じゃあその怪異を受け入れられるかといえば、そこもまた難しいんだろうなとも感じました。

こういう向き合い方もあるんだろうけど・・・

本作での解決方法は、個人的に今までに出会ったことがなく「そういう方法もあるのかぁ」と面白かったです。また、尾端にそもそも霊感がない上に、あくまで営繕屋であることから除霊ではなく「怪異を行らないようにする」という解決の仕方も斬新で良かったです。

ただ!もし、自分がこの主人公だったら・・・と思うと、多分何とかして引っ越すという選択をすると思います(笑)。本作では、最終的に怪異の根本となった「誰か」とその家で共存するということになる(家から出ていく可能性もありましたが)ので、その「誰か」が自分の縁者でなく「あかの他人」である以上、生死に関わらず、よく知らない他人との同居は受け入れられないなぁと思いました。

営繕かるかや怪異譚には続きがある

営繕かるかや怪異譚はシリーズ化されていて、現在4本が刊行されているようです(今回読んだのは一作目)。今回読んでみて面白かったのと、尾端さんの活躍をもっとみてみたいので、機会があれば続きも読もうと思います。(KADOKAWA文芸さんのWEBマガジンでは、シリーズの特設サイトが立ち上がっていますよ。2026年2月18日時点)

また、小野不由美さんの小説も今回が初めてでしたが、調べてみたら過去に観た映画「残穢(ざんえ)」の原作者でもありました。原作小説は読んでいないのですが、この映画、めちゃくちゃ怖かったのを覚えています(原作ではどんなに怖いことか・・・多分読めないです、怖すぎて)。

私はホラー好きですが、ホラー過ぎるのは後で後悔するというめんどくさいタイプです。そのためホラー度にもよりますが(笑)、営繕かるかやシリーズ以外の小野作品も気になるので、こちらもまた機会があれば読んでみたいと思います。

ホラーな小説ならこの他に、岩城裕明さんの「まじろぎ奇談」の読書感想も綴っています。興味のある方はぜひこちらもご覧ください。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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