【読書感想】すべてがFになる|森博嗣|頭脳明晰コンビが挑む完全密室事件

こんにちは、ginkoです。
今回は森博嗣先生の「すべてがFになる」の読書感想を綴ります。完全にタイトルに惹かれて手に取った作品ですが、読んでみたら頭脳明晰コンビすら困惑するほどの難解な完全密室事件を存分に楽しめました。
ネタバレは極力さけています。個人的な見どころもあわせて紹介するため、興味のある方は参考にしてください。
【あらすじ】
コンピュータサイエンスの頂点に立つ「天才博士」真賀田四季(まがた しき)。
彼女は幼いころからプログラマーとして活動していたが、14歳のときに両親を殺害して世間を賑わせた。心神喪失によって無罪となるものの、人の前からは姿を消し、とある孤島で研究を続けている。
そんな彼女に会うため、国立N大学工学部で助教授をしている犀川創平(さいかわ そうへい)と教え子の西之園萌絵(にしのその もえ)は、ゼミキャンプのついでに研究所を訪れることに。
しかし、真賀田博士は事件以来、誰とも接触しておらず自室にこもりきり。面会はすべて画面越しで、独自のコンピュータ制御が確立された特殊な施設の中で、厳重に監視されること15年。
その状況を知りながらダメ元で訪れた二人だったが、その施設で突然トラブルが発生する。出入り不可能な博士の部屋から、ウエディングドレスを纏い、両手足を切断された死体が現れたのだ。
博士の部屋に出入りできる箇所は一か所のみで、その出入り口には常に監視の者がいる。そして、真賀田博士のパソコンには不可解なメッセージが残されていた。
「すべてがFになる」
完全密室の中で一体なにが起こったのか。思わず事件に巻き込まれた犀川と萌絵は、この不可思議な事件に挑むことに・・・。
【本作のみどころ】
真賀田四季という人類を超越した「天才」
本作は、大学助教授の犀川と教え子の萌絵が、難解な事件の解明に挑むストーリーです。事件の被害者は、かつて「天才」として注目された真賀田博士とみられ、事件解明のために、彼女のことが掘り下げられていきます。
「9歳でプリンストン大学でマスターを授与、11歳でMITの博士号を取得し、12歳からプログラマーとして活動」という経歴をもちながら「14歳で両親殺害」という衝撃的な過去をもつ真賀田博士。彼女の発する言葉は難解な部分が多いものの、どこか不思議なカリスマ性を感じさせます。
「彼女が何を考え、どういう生活を送っていたのか」
博士の部屋に残された物から、色々と想像を膨らます犀川と萌絵。二人もまた頭脳明晰ですが、彼らに「天才」の思考がどこまで追いつけるのかは、みどころの一つです。
犀川と萌絵の対比
事件の解決に挑む犀川助教授と西之園萌絵。元々、萌絵の父親が犀川の恩師であったことから、二人は彼女が子供の頃から旧知の仲です。萌絵にとって犀川は「自分よりも頭が良い」と感じた人物で、子供の頃はそれが悔しくて嫌いだったが、今は好意を抱いています。
萌絵は頭の回転が早く計算が得意、発想力や行動力にも長けている、一方の犀川はとにかく冷静。そのため、事件解決においては萌絵が中心となって動いているようにみえますが、論理的なターンにおいては犀川の能力が存分に発揮されます、
結果的にみれば、やはり助教授で年長者の犀川に軍配はあがりますが、事件解決には萌絵の尽力が欠かせません。まさに静と動の二人の対比も、作品のみどころではないでしょうか。
論理的でありながら考えさせられる作品
本作ではコンピュータやシステムといったものが物語の軸にあり、全体を通して論理的な描写が多い印象です。その一方で、頭脳明晰である真賀田博士や犀川、萌絵には自分の価値観がしっかり備わっており、発せられる言葉に思わず考えさせられます。
「現実ってなんでしょう?」
「他人に干渉しないのが自由かしら?」
「死を恐れている人はいません、死に至る生を恐れているのよ」
様々な意見や疑問に対して、各々に考え方があり、その違いもまた興味深いポイントです。
【読書感想】
「すべてがFになる」の真意にやられた
ネタバレになるため答えや多くは述べれませんが、意味がわかった時に驚きというものはありませんでした。「そんなんわからんわ!!!」と思ったのが正直なところですが、真賀田博士らしさに納得もしました。
読み進めながら「Fってなんだろう?」と、色々想像していたのですが、かするどころか何も思いつかなかったので、これはこれで面白かったです。「Fを指すもの」「すべてがFになるという意味」「すべてがFになるために」色んな角度から見える「すべてがFになる」に「そりゃタイトルになるわなぁ」と感じました。
AIが加速する時代を予知してる?
少し調べたところ、この作品が発表されたのは1996年で、今から30年前になります。当時はまだ、携帯電話すら普及(各個人が所持)していなかった時代で、当然スマホやパソコン、タブレットも一般的ではない時代。
ですが、物語の内容はシステムやバーチャル世界など、今の時代に合致するような描写が多く「将来的にこういう世界になるのがわかっていたのかな」と思ってしまうほどでした。物理的な面だけでなく、人とのコミュニケーションにおいても「本当の他人とコミュニケーションをとらなくなる」というセリフがとても印象的で、AIが加速している現代を見透かされている気もしました。
犀川助教授に好感がもてた
犀川先生は、非常に冷静で割り切った考え方を持っており、他者との間にも一線引いたような感じを受けます。人によっては冷たく感じられるかもしれませんが、個人的にはとても好感がもてる人物でした。
また「時間の価値」や「他者とのコミュニケーション」についての考え方など、共感できる部分も多く、先生の価値観をもっと知りたいとも思いました。事件解決パートでは、助教授という職業もあってか、萌絵をはじめ周りの人たちにわかりやすく説明してくれるところも良かったです(笑)。
【新しいタイプのミステリーに出会えてよかった】
本作は、天才工学博士に翻弄されるような内容で、少し難解な箇所もありましたが、システムに疎い私でも楽しめる新しいタイプのミステリーでした。どうやら本作は、森博嗣先生のS&Mシリーズ第1作目で、全部で10作品ほどが刊行されている模様です(!)。
また読みたい本が増えてしまい、どれから読むか迷ってしまいますが、楽しみがまた一つ増えたということで良しとします!
ミステリーの本なら、中山七里さんの贖罪の奏鳴曲(ソナタ)の感想も綴っていますので、良かったら参考にしてください。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。









