【読書感想】『れんげ荘』群ようこ

こんにちはginkoです。
この記事では、群ようこさんの「れんげ荘」を読んだ感想を綴りました。
あらすじ
会社にも家庭にも嫌気が指した主人公が、45歳で勤め先を早期退職し、安アパート「れんげ荘」で月10万円の一人暮らしを始める物語。 |
鬱々とした毎日を送るキョウコはある日、とあるテレビ番組で「連日連夜のパーティーに明け暮れるような仕事に嫌気をさした女性がすっぱりと会社を辞めた」のを見て、自分も退職の意思を固めます。
退職後は貯蓄を切り崩しながらの生活となるため、引っ越し先に選んだ物件は、都内で家賃3万円の安アパート「れんげ荘」。れんげ荘は、築40年を軽く超える古いアパートで、不動産屋から住めるような所じゃないと言われますが、キョウコはこのアパートを気に入ります。
アパートには、他にも個性あふれる住人が数人暮らしており、いい距離感で付き合いながら新しい生活に踏み出すキョウコ。はじめは会社勤めの習性が抜けきらずにいたものの、雨や土の匂い、アパート内の生活音を感じながら、次第に新しいスローライフに慣れていきます。
しかし、カビや虫、すきま風など四季折々での悪戦苦闘や、特にする事のない毎日に心が折れそうな時も。それまでの日常から解き放たれたかったはずなのに、いざやってみると楽しむことができず、モヤモヤしてしまいます。
キョウコはれんげ荘での日々に、自分なりの折り合いや答えをどう見つけていくのでしょうか。
個人的な物語のポイント
都内で家賃3万円のボロアパート
キョウコの住むれんげ荘は、軽く40年は超える(50年いっているかもしれない)2階建ての古いアパートです。二階部分は生い茂った樹にまぎれこんでいて、外壁にはいたるところに黒いスプレーでいたすら書きがされています。
トイレとシャワーは共同で、一部屋は六畳一間(押し入れ一間あり)に台所半畳の広さ、窓は開けにくくすきま風が入ってくるとのこと。しかし、キョウコはこの物件をみて「素敵」と言い、紹介した不動産屋をびっくりさせています。
個性豊かな住民
れんげ荘の2階には誰も住んでおらず、1階3部屋の内、キョウコは2号室に入室します。1階の住民は他に3人おり、しっかりとキャラがたっています。
- 1号室の住民:別れた彼女の靴がなかなか捨てられない物静かで丁寧な青年サイトウくん
- 3号室の住民:年配で面倒見のいいおしゃれな女性クマガイさん
- 物置(!)の住民:自称「旅人」の自由奔放な若い女性コナツさん
中でもクマガイさんとは、一緒にお茶したり何かと付き合いがありますが近すぎず、いい距離感です。
会社とは縁を切れても家族とは縁を切れない
キョウコは会社でのストレスだけでなく、母親に対してもストレスを抱えていました。会社を辞めるまでにも独り暮らしを考えたことがあったが、そうすると会社を辞めれなくなってしまうと思っていたのです。
会社を辞め、家も出る決意をし、れんげ荘での生活を始めたはいいですが、母親の存在はキョウコにのしかかったまま。しかし、キョウコには自分に理解を示してくれる兄がいたため、何とかやり過ごしていきます。
また、同じアパートの住人家族も時折登場しており、物語全体を通して身内との縁も感じさせる内容です。
感想
思っていたのと違った
本の紹介文を最初に読んだ時、中年女性が嫌なことから解き放たれて、丁寧なスローライフを満喫し、癒されていくような内容を勝手に想像していました。
実際は、れんげ荘での新しい日々に悪戦苦闘しながら、自分の抱えるモヤモヤと向き合うような内容が多かったです。満喫できるようになるのはもう少し後なのかなという所で終わっており、勝手に想像をふくらませた私のせいですが、消化不良感が否めませんでした。
母親の存在が大きすぎてしんどい
物語の全体において、キョウコの母親の存在感が大きすぎて、要所要所で読むのがしんどくなりました。
専業主婦で世間体や外面を異常なくらい気にする母親は、被害妄想がひどくヒステリックな気性を持ち合わせており、常に人を責めています。そのため、キョウコに対しても愚痴や嫌味を言うのが日常で、れんげ荘での暮らしが判明してからは、その対応が更にヒートアップ。
この母親に既視感を感じるためか、れんげ荘での暮らしより、母娘の関係性が物語の軸なのではと思うほど、母親が気になって仕方がありませんでした。また、母親にストレスを抱えているとはいえ、キョウコは受け流しが上手く、怒りはその程度なの?と思えるようなサバサバした感じにも少しモヤモヤが残りました。
それでも、何かしら歩み寄りがあるのでは?と思い読み進めましたが、結局、私の中でキョウコの母親は最後まで憎たらしいだけの人で終わってしまいました。母親が心理が全くわからなかったため、何故ここまでの人間性になったのかなど、もう少し知りたかったです。
れんげ荘はシリーズ化している!
今回読んだ「れんげ荘」は、自分の中でハズレかなと思ってしまったのが正直のところ。これは、内容が面白くないというより「自分には合わなかった」からです。読んでいて、自分の中の色んなことが思い出されてしんどくなってしまったため、親との関係に何かしらの悩みを抱えている人は少し注意が必要かもしれません。母娘の関係が良くなることなく終わったのも、非常に残念でした。
とはいえ、群ようこさんは私が好きだったドラマ「パンとスープとネコ日和」の原作者でもあります。同著者の本を読んだのは今回が初めてでしたが、読後に他の作品も読んでみたいと思ったところ、この「れんげ荘」がシリーズ化されていることを知りました。
今回読んだ「れんげ荘」がシリーズ最初の作品となっており、2025年4月時点で合計9作品も出されています(驚)。と、すると今回の作品は、序章みたいなものでその後のシリーズ本で家族との関係や、スローライフにも進展があるのかも・・・と、また勝手に想像して期待。
というわけで「れんげ荘」は、個人的に「しんどい」という感想で終わりましたが、スローライフや住民達とのやり取りなど今後の展開も気になります。「れんげ荘」は、紹介文で長篇とありましたが、実際には約260ページで割と早く読めたので、少し落ち着いたら他のシリーズで続きを読んでみたいと思いました。